爽やかくんの為せるワザ
やっと
翌日。
それは桃ちゃんから知らされた。
「たま、やばいかも」
心配そうな表情で私に迫る桃ちゃん。
私はびっくりしながらも、なんのことだか分からず首を傾げた。
そして、教室に入ると私の耳にもようやく聞こえてきたのだ。
「え、藍くんってたまちゃんのこと好きだったの?」
「ていうかあの2人って逆にまだ付き合ってなかったんだ」
「藍くんに好きな人いたってまじ?」
「でも成瀬さん逃げたんでしょ?」
「うそ、藍くんの告白逃げたの?」
「やばい……なんか悲しい」
「えーひどくない?」
「告白逃亡はやばい」
廊下や教室内から聞こえてくる生徒の声。
……こ、これって。
「藍くんの告白、なんか2年が目撃してたみたいで……今すごい噂回ってる」
桃ちゃんの言葉に、私ははっとした。
そういえば逃げ出した時、ドアの前に生徒が数人いたような。
あの人達……同学年だったのか。
……ま、まずいよねこれ。
「沙羅は寝坊しててまだ登校してきてないんだけど、こんだけ噂回ってたら収拾つかない」
「ど、どうしよう……」
「とりあえず大人しくしとこ。こういうのは沙羅がいた方がいいし。間違った噂してる人は訂正してってるんだけどね」
ごめん何もできなくて、と桃ちゃんが申し訳なさそうに私の肩を掴んだ。
私はぶんぶんと首を振る。
私のせいだ。
私のせいで……藍くんにも桃ちゃんにも迷惑掛けちゃってる。
……私が逃げ出したりなんかしなければ。