爽やかくんの為せるワザ
おまけ 〜兄と彼女〜
「高校生って良いなぁ」
カフェのソファ席で、コーヒーカップを傾けながら愛美は小さく言葉を漏らす。
貴士はそんな愛美の言葉を聞き逃すはずがなく、持っていた旅行情報誌を閉じてテーブルに置いた。
「なんだいきなり」
「文化祭行ったでしょ。なんか皆楽しそうで懐かしいなぁって」
「そうか。珠姫しか見てなかった」
「うふふ、貴士くんはほんとにたまちゃんが大切なのね」
クールな表情を崩さない貴士に反して、愛美は常にニコニコと穏やかな笑みを見せる。
貴士は「当然だ」と頷いてコーヒーカップを持った。
「高校生ってキラキラしてて良いよね。イケメンも多かったし」
「なっ……」
動揺してこぼしかけたコーヒーを慌てて支える貴士。
そんな様子に、愛美はまたうふふと微笑む。
「たまちゃんと仲良いって言ってた子もイケメンじゃなかった?」
「……あいつか。まあチャラチャラはしてなかったな」
今度はゆっくりとコーヒーカップを傾ける貴士。
文化祭の時に見た男子達を思い出しながら、貴士は少し顔をしかめた。
「たまちゃんとお似合いよね」
「なんだと。それはない」
大切な妹をどこの馬の骨かも分からない奴に譲ってやるわけがない。
貴士は珠姫に、高校生の間は恋愛などしなくていいと常々口にしていたほどのシスコンである。