爽やかくんの為せるワザ
「びっくりしたよね、あの時」
情けなさそうに笑う羽水くんを見て、私は少し俯いた。
……ビンタされた時のことだよね。
「うん……」
「元カノが違う男と腕組んで歩いてるの見て、それについて少し追及したら向こうがキレちゃって……」
浮気されてたってことだよね。
浮気された羽水くんが叩かれるなんて……理不尽だよ。
「でもこれは浮気させてしまった俺が悪いんだよね。こういうの何回かあって、やっぱり……すごく寂しい思いさせてしまってるんだろうなって」
羽水くんはまたあの切なさを含んだ笑顔を見せる。
……私は付き合った経験がないし、よく分からないんだけど、
浮気はされる側にも問題があるって……聞いたことある。
浮気は良くないことだけど、それぞれいろんな事情があるってことなんだろうか。
「俺さ、好きになれないんだよね……付き合っても。
付き合っていく内に好きになろうと頑張るんだけど、どうしても無理で、相手のこと十分に大切にできないまま振られるんだよ」
「最低でしょ?」なんて言って笑う羽水くん。
……そうだったんだ。
ちゃんと好きになれないって気持ちは、少し私と似てるかも。
気持ちってほんとに思い通りにならなくて、それってすごく辛い。
……羽水くんも羽水くんなりに努力してきてるんだろうな。
「……羽水くんにはきっと良い人現れるよ。羽水くんがちゃんと好きになれるような人が……!」
私は信じてるもん。
私にも運命の人が現れてくれるって。
その運命の人を自分自身で見つけられるって。
「……そうだね。ありがとう、成瀬さん」
柔らかい笑顔に、私も自然と頬が緩む。
羽水くんはこんなに良い人なんだもん。
早く幸せになって欲しいな。
……頑張れ羽水くん!