爽やかくんの為せるワザ
私と藍くんは学校から出て、駅前のクレープ屋に立ち寄った。
ここのクレープは美味しいって、私達の学校で割と人気なんだ。
沙羅ちゃん達ともよく来るけど、まさか彼氏になった藍くんと来れるようになるなんて……。
夢みたい。
「藍くんって苺好きなの?」
「うん」
注文したクレープが店員から渡され、私は両手にクレープを持ったまま藍くんに尋ねる。
私が頼んだのはバナナチョコで、藍くんはイチゴチョコ。
苺好きなんだ……ちょっと可愛い。
「一口食べる?」
「え、いいの?あ、じゃあ藍くんも私の食べる!?」
「うん、ありがとう」
私は藍くんにバナナチョコのクレープを手渡す。
そしてイチゴチョコのクレープをまじまじと見つめ、思わずにやついてしまった。
すごくカップルらしい!
お互いのクレープを食べ合えるなんて……!
付き合うって最高なんだねぇ!
「……珠姫ちゃん、食べないの?」
「えっ、あ……食べます食べます!」
私は慌てて手元のクレープにかじりついた。
……こんな風に思うのも、きっと私だけなんだろうな。
それが嫌ってわけじゃないし、そんなの仕方ないことなんだろうけど。
ちょっとだけ寂しい気もする。
……って、せっかく付き合えたのに贅沢なこと考えちゃ駄目だよね!?
「はい、ありがとー!美味しいね!」
「ん、バナナも美味しい。まろやかで食べやすい」
「あはは、藍くん食レポ上手だね」
食レポ……?と恥ずかしそうに笑う藍くんに、私は吹き出してしまった。
……こんなに幸せなんだもん。
私が余計なこと考えて不安になるなんて、もったいないよね。