爽やかくんの為せるワザ




「あ、藍くんだー」




ふと、そんな女の子の声が聞こえてきた。


2人で声のした方に振り返ると、そこには同じ学校の女子生徒が2人いて。

手には食べかけのクレープがあった。



はっ、そっかここ私の学校でも有名だもんね。

そりゃ同じ学校の人いるか。



そして話し掛けてくれた子は、確か同学年の鈴木さん。




「デート?今たまちゃんと付き合ってるんだよね?」


「……うん、そうだよ」


「そっかー。楽しそうで良かった」




鈴木さんは藍くんの背中を親しげにポンっと叩いて笑顔を見せる。


藍くんってやっぱり人気者なんだなぁ。

鈴木さんとも仲良いんだ。




「2人ともお似合いだね。お幸せに!」


「ありがとう鈴木さん」


「じゃーね!」




そうして私達は手を振って鈴木さん達を見送った。


私は去って行く鈴木さんの背中を少しだけ見つめる。



……気にしすぎかな。

なんか……ちょっとだけ、藍くんとの距離が近かったような気がする。


いややっぱり気にしすぎだよね!?

藍くん仲良い人多いし……そんなの他にもいっぱいいるはずだよね。


付き合いたてでこんなこと気にするなんて……私ってこんなに心が狭かったんだ。




「珠姫ちゃん」


「……あ、ごめん!ぼーっとしてたっ」



不意に藍くんに呼ばれた私は、慌てて顔を藍くんに向ける。


ていうかせっかくの放課後デートでこんなこと考えるなんて私最低だっ。


< 194 / 311 >

この作品をシェア

pagetop