爽やかくんの為せるワザ
「……なんか自分から言うのすごく気が引けるけど、珠姫ちゃんが気にしてそうだから言うね」
「え?」
ぽりぽりと顔を指で掻きながら、藍くんは少し申し訳なさそうな顔をする。
……な、何?
「鈴木さんと……実は前付き合ってたんだ」
へ。
そ、そうだったの!?
……ていうか、それなら結構皆知ってたことだったのかな!?
私が知らなかっただけで……。
だからあんなに親しげというか……距離が近かったのか。
藍くん……私が鈴木さんを気になってたことに気付いてくれたのかな。
絶対言いにくかったよね……。
……言わせてしまって申し訳ない。
「……ごめん。珠姫ちゃんそんなこと聞いてないしってなるよね」
「いや、こちらこそごめん!言ってくれてありがとう!
私も実際気になっちゃってたし……」
駄目だ。
藍くんに謝らせたくないっ。
ちゃんと素直に言わなきゃ、気を遣わせてしまう。
「い、いつ頃付き合ってたの?」
「えーっと……1年の終わり頃かな」
「へぇ、どのくらい?」
「1ヶ月ちょっとかなぁ。……もちろん鈴木さんから振られたんだけど、お互い話し合ってちゃんと別れたから今も普通に接してくれてるんだ」
……そっか。
そうだよね。
別れたのは、藍くんが鈴木さんのこと好きになれなかったからだよね。
……でも、そんな藍くんは私のことを好きになってくれた。
それって、やっぱりすごいことだよね。
だから、不安になることなんてないじゃん。
今幸せなんだから、それで十分じゃないか。