爽やかくんの為せるワザ




「珠姫ちゃん……?」




と、不意に聞こえた声に、私はドキッとする。


慌ててドアの方に顔を向けると、そこには藍くんが立っていた。


はっ、もう掃除終わったんだ!




「藍くん!」


「えっと……取り込み中?」




藍くんは少し伺うように、私と佐賀くんを交互に見る。


すると佐賀くんはガシッと鞄を掴んで首を振ったのだ。



「と、取り込んでない……。じゃあ……また明日……」


「あ、またね佐賀くん!」




急ぎ足で教室を飛び出して行った佐賀くんを、私と藍くんはしばらく見送った。


……気遣わせちゃったかな。

ていうか、忘れ物取りに来ただけだったのに、呼び止めちゃったのは私だった。


部活かもしれなかったのに……悪いことしちゃったな。




「ごめん珠姫ちゃん、掃除長引いちゃって」


「ううん、全然大丈夫っ」



私は自分の鞄を掴み、藍くんのもとへ駆け寄る。


藍くんは私が教室を出ると、教室の電気を消してくれた。


……さすが藍くん。

私完全に電気のこと忘れちゃってたよ。




「佐賀くん……顔赤かったけど、なんの話してたの?」


「え」



何気ない様子の藍くんに、私は少し言葉を詰まらせる。


……特に変わった話はしてなかったんだけど。

なんとなく、最後の佐賀くんの様子が……気になってしまう。


でも、藍くんに隠す理由は無いし、ちゃんと言おう。



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