爽やかくんの為せるワザ
――ある日の帰り道。
桃は花恋達と駅近くにある人気クレープ店を訪れていた。
「花恋って今彼氏いたっけ?」
クレープを頬張りながら1人が花恋に尋ねる。
桃を除いて、一気に花恋に視線が集まった。
「いないよー」
「えーほんと謎。花恋みたいな可愛い子がフリーでいるのが不思議でならない」
「なにそれ、普通でしょ?」
くすくすと笑う花恋に、女子達は改めて「謎だ……」と声を揃える。
桃はそんな会話を聞きながら平然とクレープを食べ進めていた。
花恋に彼氏がいないことも、情報通の桃は既に把握している。
「じゃあさ花恋、最近気になる人はいんの?」
桃の質問に、一同は「それを聞きたかった」と言わんばかりに目を輝かせて花恋に注目した。
「……えー?気になる人かぁ……」
「学校内で、誰かいない?」
「ん~……あっ」
何かを思いついた様子の花恋に、今度は桃も含めて注目した。
花恋は視線に少し恥ずかしがりながらも、笑いながら話しだす。
「気になるっていうか……面白いなって思う人はいるかも」
「面白いから気になるんでしょ。ほら早く教えて」
「あはは、まあね。……えっと、敬吾くんかな」
「「えぇ!?」」
クレープ屋のテラス席に一同の声が響き、数人の客が振り返った。
ざわざわと騒ぎだして顔を見合わせていく女子達。
敬吾が花恋を好きだということは有名で、もちろんここにいるメンバーも全員知っていた。
まさかあの花恋の口から敬吾の名前が出るとは思っておらず、全員動揺と興奮を隠し切れていない。
桃も珍しく呆然として花恋を見つめている。