爽やかくんの為せるワザ
藍くんの両親は共働きらしく、パートに行ってるお母さんは18時くらいまで帰って来ないらしい。
だから藍くんの家には、今私と藍くんしかいない。
1階にマックスがいるけど。
私はシャーペンを持ったまま、ちらりと向かいに座る藍くんの表情を伺う。
藍くんはノートに視線を落として、サラサラとペンを走らせている為こちらには気付かない。
……こんなこと考えるなんて、私はきっと変態だ。
私今、〝藍くんに襲われるかも〟ってそわそわしてる。
と、当然そんなことはしないだろうけど!
さっきまで皆いたし、もうそろそろお母さん帰って来るだろうし!
付き合ってまだそんなに経ってないし、そもそも藍くんだし!
……こんな状況で、優しい藍くんが私のこと襲うわけないよね。
「……ん?どうかした?」
藍くんがようやく私の視線に気付く。
目が合った瞬間、私の心臓は爆発したみたいに飛び跳ねた。
……でも、
2人っきり……だし。
もしかしたら……もしかしたりして。
この間は藍くんからキスしてくれたし……。
キスくらい……今日はしちゃうんじゃないだろうかっ。
こ、こんなこと考えてるなんて……藍くんに知られたら引かれるよね。
「いやっ、なんでも、ないです……」
「そう?とりあえずこのページ終わらせようか」
相変わらず落ち着いた様子の藍くんは、にこりと微笑んで勉強を再開させた。
私も返事をして、ワークに視線を戻す。
勉強してるのに、私ってばなんてやましいことを……!
……でも集中できない。
藍くんは……やっぱりそんな気ないのかな。