爽やかくんの為せるワザ
そもそもほんとに襲われたら、どうするの私。
……か、考えただけで顔が熱くなる。
襲われても襲われなくても動揺を隠し切れない。
……ああ駄目だ。
私は駄目な子です。
勉強に集中できなくて、ごめんなさい。
……ここはもう、聞くしかない。
私は、藍くんには素直でありたいんだ。
引かれるかもしれない、というか絶対引かれるだろうけど、
こんな状態で勉強できる気がしないし、はっきりさせたい。
「あの……藍くん」
「うん?どうしたの?」
「……えっと……」
喉まで出かかった言葉が中々出てこない。
言うべきじゃないのも分かってる。
でも、素直になりたい!
「……藍くんは……
今日、私のこと……襲いますか……?」
…………言った。
言ってしまった。
藍くんの部屋はしーんと更に静まり返る。
時間が止まったような感覚に襲われた。
俯いていた顔をゆっくりと上げて藍くんの表情を確認する。
……藍くんは目を見開いて私を見つめていた。
「……」
そして少し恥ずかしそうにぽりぽりと指で顔を掻いて、笑ってみせた。
「……襲わないよ」
そう言った藍くんは、笑顔のまま視線をノートに戻す。
「ほら、もうすぐ母さん帰ってくるだろうし。珠姫ちゃんが気まずくなっちゃう。
それと、まだ付き合って日が浅いしさ。俺珠姫ちゃんのこと大切にするって決めてるし」
あはは、と笑いながらつらつらと話す藍くんの言葉が、少しずつ遠くなっていくのを感じる。
藍くん……全然動揺してない。
うわ、私……なんかめちゃくちゃ恥ずかしい。