爽やかくんの為せるワザ




「オラァ!」




背後から聞こえた声に、私はびくっと驚く。

慌てて振り返った頃には、既に相手がボールを投げた後だった。




「っ!」




ボールがすごい勢いで私に向かってくるのが見える。

すると、近くにいた誰かに腕を掴まれた。



えっ……?

と、顔を上げようとした時、足が絡まってつまずいてしまって、


私の体重は腕を掴んでくれた誰かに傾く。



そして




――バンッ!



弾けるような大きな音が頭上で聞こえた。

ボールが地面にバウンドするのが見えて、私は腕を掴んだ人にボールが当たったことを認識する。


はっとして見上げると、目の前には倒れる寸前の佐賀くんがいたのだ。



「さ、佐賀くん!?」



ゆっくり傾いていく佐賀くんに、私はただ声を掛けることしかできなかった。

そして佐賀くんはそのままバタンと地面に倒れ込んでしまう。


……佐賀くん!!




「大丈夫!?佐賀くん!」


「ちょ、今顔面にクリーンヒットしたぞ!?」




佐賀くんのそばに駆け寄ってきた敬吾くんの言葉に、私は状況を理解した。


佐賀くん……、もしかして当たりそうだった私を助けようとしてくれてたのかな。

それで腕引っ張ってくれたけど、私がつまずいてしまって佐賀くんまで態勢崩しちゃって、


違う方から投げられたボールが佐賀くんの顔面に命中してしまったんだ。



……わ、私のせいだ!




「ごめんなさい佐賀くんっ」


「佐賀大丈夫か!?」


「……だ、大丈夫……」



すると、佐賀くんはむくりと体を起こして小さく両手を振りだした。


……ほっ。

良かった……起きてくれた。


< 237 / 311 >

この作品をシェア

pagetop