爽やかくんの為せるワザ
「じゃー帰るか」
「うん。……てか、なんでここの自販機来たの?飲み物欲しかったなら帰る途中に買ったら良かったのに」
「あーまあそうだけど」
「めっちゃ遠回りじゃん」
「遠回りしたっていいだろたまには。細かいことは気にすんな」
そんな会話をしながら私達は肩を並べて歩き出す。
人通りが少ないこの廊下を2人で歩いていると、なんだかこの学校には私達だけしかいないような気がしてくる。
「なぁ緒方」
「ん?何」
「俺さー……」
歯切れ悪く話すカツを少し不審に思っていると、いつの間にか私はカツの前を歩いていたことに気付く。
あれ?
「緒方のこと好きだ」
その言葉が聞こえた途端、私の足はぴたっと動きを止める。
遠くで聞こえてくる吹奏楽部の練習音が別世界の音のような気がした。
振り返れない。
「一応言っとくけど、友達としての好きじゃないから。……付き合いたいと思って、告白したから」
「……」
カツがどんな顔をしているのかすごく気になる。
でも体が石みたいに固まって動かない。
あまりにも突然の出来事に、頭も体もついていけてない。
「……俺と付き合って欲しい」
鮮明に聞こえてくるカツの言葉に戸惑う。
……何これ。
最初ドッキリかと思ったけど、なんかそれは違うって分かった。
こんなカツ初めてだし。
今ならたまの気持ちが分かるかもしれない。
どうしようもないくらいこの場から立ち去りたい。