爽やかくんの為せるワザ
そうして私と藍くんのクリスマスデートは始まった。
一緒にお昼を食べて、映画を観る為に駅前の大きなモールへ。
平日だけど、クリスマスだからなかなか人は多かった。
というかカップルと親子ばっかり。
私達は上映一覧を眺めながら何を見るか選んでいる最中。
「珠姫ちゃんどれがいい?」
「うーん……藍くん観たいのある?」
「俺はどれでもいいよ。あ、これは?よくCMで見るやつ」
「あ、良い!それにしよっ」
「他に観たいのなかった?」
「うんっ!私もそれ気になってたし」
藍くんは「そっか」と優しく微笑んで券売機へ向かいだした。
私達が選んだのは、最近よくCMに出てるミステリーの邦画。
有名な作家が原作で、有名な俳優も出てるとかでかなり話題になってるらしい。
「席ここでいい?」
「うん!わあ、かなり埋まってるね」
「うん、空いててラッキー」
ポチポチと画面をタップして進めていく藍くん。
その指がすらっと細くて密かにドキッとする。
そしてお金を支払うところで、私がお札を用意して待っていたら、藍くんは「いいよ」と言って私の分まで払ってしまった。
私はぎょっと驚いて藍くんに顔を向ける。
「えっ、私払う!」
「駄目だよ。ここは払わせて」
「でも……」
「彼氏らしいことさせてよ」
ね?と優しい笑顔を見せてくれた藍くんに後光が差して見えた。
じーん……。
めちゃくちゃ彼女扱いされてる……嬉しい。
でも、奢ってもらうのってちょっと気が引けるな……。
藍くんの優しさだから、ちゃんと受け止めますけどっ。
ありがとう藍くん!