爽やかくんの為せるワザ




スクリーンルームに移動して私達は並んで席に座る。


この静かな広い空間が好きだなぁ。




「映画なんて久しぶりに観るかも」


「私も。楽しみだね」


「うん、楽しみ」




薄暗い中に見える藍くんの笑顔。

おかしいな、暗いのに眩しいや。




「……幸せだなぁ」




藍くんには聞こえないくらいの小さな声で私は呟いた。


大好きな藍くんと、こうしてクリスマスデートが出来てる。

それがどれだけ幸せなことか。


今まで彼氏を作れなかった私がこんな良い人と付き合えてるなんて、昔の私が知ったらびっくりするだろうな。


色々空回りもしちゃったけど、藍くんや周りの皆のおかげで今の形になれた。

ほんとに感謝しかない。




「もうすぐ始まるね」




隣の藍くんはそう言うと、さりげなく私の手を握った。

藍くんの手は少し温かくて、私の体は一気に熱を帯びる。




「……っ」


「あはは、可愛い」




硬直する私を見て、藍くんは無邪気に笑った。



……ずるい。

可愛いのは藍くんだよ。



映画中、ずっと手を握るんだろうか。

私……耐えられるかな。


心臓がもたないよっ。


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