爽やかくんの為せるワザ







――「完全に騙されちゃった……」


「どんでん返しだったね」




映画を観終わった私達はカフェで映画談義を交わす。



映画はすごく面白くて、しばらく余韻に浸れた。

話題になる理由が分かる。




「俳優の演技もすごかったし」


「ね……もうハラハラし過ぎて心臓が疲れた……」




映画だけのせいじゃないと思うけど。


私の手汗ひどかっただろうな……。

恥ずかしい。




「映画って良いね。久々に観たけど結構ハマった」


「うんうん。また行こっ」


「……うん、絶対行こう」




優しく微笑む目の前の藍くんに、一瞬固まる。

その視線が熱くて、なんだか視線から愛情を感じたような感覚に……。


う……また顔が熱くなる。




「あ、珠姫ちゃんもこのケーキ食べる?」


「えっ……いいの?」


「もちろん。はい、あーん」




!?


ケーキを刺したフォークが目の前に迫る。

私はケーキと藍くんを交互に見て動揺する。



こここんな嬉しい展開になっていいの!?

ていうか『あーん』とか……藍くん可愛過ぎる……っ。


とんでもない不意打ちだ。



私は恥ずかしさを我慢してケーキを口に入れた。


ほわんと甘いクリームの味が口の中に広がって。

目の前には、動揺を隠し切れない私を見つめて愛しそうに微笑む藍くんがいる。


……とろけそう。




「ハマる」


「……えっ?」


「いや、なんでもないよ。こっちの話」




にっこり笑う藍くんに、私は首を傾げる。


……ハマる?

なんだろう、映画の話かな。



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