爽やかくんの為せるワザ






ショッピングモールを歩き回っていると時間はあっという間に過ぎていった。

もう辺りは暗くなってて、私達はイルミネーションを見に行く為に街路樹へ向かう。


ていうか周りの建物とか植木にも既にイルミネーションが施されてて感動している。




「すごい藍くんっ!綺麗!」


「そうだね。珠姫ちゃん、人多いからはぐれないようにして」


「あ、分かった!」




確かに人が多い。

ほとんどカップルとか家族連れで、一度はぐれたら再会するのは難しそうだ。


私は極力藍くんに近寄る。




「……珠姫ちゃん、腕に手回してて」


「えっ……」


「ほら、手繋いでると逆に邪魔になりかねないから」


「……そ、そっか」



それはそうだ。


……ここは思い切るしかない。



私はなんとか藍くんの腕に手を回して、しがみつくように体を寄せた。


……すごく緊張する。

ドキドキし過ぎて、体から湯気が出そうだ。


こんなに寒いのに!



……私の心臓の音が藍くんの腕から伝わったらどうしよう。


うぅ、いちいち緊張するっ。




「なんか……恥ずかしいね……」


「うん……俺も自分で言ったのに恥ずかしくなってきた」


「あはは……」





腕を組んで歩く私達の間には沈黙が流れる。

雑踏の音で気まずさは紛れるから救われた。



……今日、ドキドキしっぱなしだ。


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