爽やかくんの為せるワザ
藍くんが持って来てくれたナイフでケーキを切り分け、私達はクリスマスケーキを頂いた。
程よく甘い生クリームと、ふわふわのスポンジが絶妙。
「美味しい……」
「うん、美味しい。甘過ぎないね」
「あ、藍くん苺食べる?」
「え?あ……俺が苺好きって言ったから?
あはは、ありがとう。でもいいよ、珠姫ちゃんも食べて」
ほら、と藍くんは私の口に苺を入れてくれた。
うっ……不意打ち。
まんまとときめく私。
……ほんとに藍くんはズルいよ。
「あ」
「ん?」
「藍くん、生クリームが……」
藍くんの顔に手を伸ばしかけて、はっとする。
この流れ……身に覚えが。
〝……珠姫ちゃんの口に、生クリーム付いてた〟
〝甘い〟
……危ない危ない。
安易な行動は良くない。
私は自分の口を指差して「この辺」と藍くんに教えた。
藍くんは「ありがとう」と言って生クリームを拭き取る。
「なんか前にもこんなことあったね」
「えっ」
「クレープ食べに行った時か」
「……そ、そうだねっ」
藍くんも思い出したか……。
私は今でもあの時のことを思い出すとにやけそうになる。
動揺する藍くんが……本当に可愛かった。
「……」
「珠姫ちゃん?」
顔を覗き込まれて、私は思わずびくっとしてしまう。
藍くんは「え」と驚いて声を漏らしていて。
……まずい。
意識してることバレちゃう。
考えないように、意識しないように努めてたけど
あの時のこと思い出しちゃうとどうしても……。