爽やかくんの為せるワザ

「……珠姫ちゃん」


「……はい……」


「あの、さ」




藍くんは頬を指で掻きながら、その場で座り直す。

私はその様子にドキッとした。


……これは、何か言われる流れだ。

やっぱりバレちゃったかな。




「……前、俺の家で勉強会してた日に、珠姫ちゃんが聞いてくれたことあったよね？」


「え……」




気まずそうに話し出す藍くんに、私の顔は引き攣った。


聞いてくれたことって……。

もしかして、『襲いますか』ってやつ……！？




「あの時に俺……『襲わない』って言っちゃったけど」


「……っ？」


「珠姫ちゃんのこと傷付けたよね……ほんとにごめん」





頭を下げた藍くんに私はきょとんとする。


……え？

藍くん……どうしたの？




「珠姫ちゃんを安心させたくてああ言ったんだけど……間違ってたことに気付いた」


「……」


「珠姫ちゃんがそれで『魅力が無いから』とかって自信無くしてたら……ほんとに悪いことしたなって……」


「藍くん……」


「だから、ほんと、何も不安に思わなくて大丈夫だから。珠姫ちゃんはすごく魅力的だからっ」




少し声を張ってそう訴える藍くんの様子から真剣さが窺えた。



……ほんとに、なんで藍くんはこんなにも優しいんだろう。


すごいよ藍くん。

私が不安に感じてたこととか、ちゃんと気付いてくれる。