爽やかくんの為せるワザ



「ほんとだ。気付かなかった」




あはは、と照れ臭そうに笑う羽水くん。

そして指で頬を掻きながら、私に向き直る。




「えっと、じゃあ……珠姫ちゃんって呼んでいい?」


「…うんっ」




物凄く沙羅ちゃんの視線が気になるけど、私はなんとか恥ずかしさを耐えて頷いた。


羽水くんは嬉しそうに「やったー」と笑ってくれて、思わず私まで笑ってしまう。


カツくんは「なんだよこれ。なに見させられてる?」と私と羽水くんを交互に見るのだった。





「俺は藍でもなんでもいいよ」


「じゃあ……藍くん!」


「付き合いたてのカップルみたいなやり取りだな」





沙羅ちゃんは突然そんなとんでもないことを言う。


真っ赤になって慌てる私とは逆に、羽水く……じゃなくて、藍くんは「あはは、ほんとだー」なんて爽やかに笑っていた。




……見事な受け流し。

さすが藍くんと言うべきか。


私も見習おうっ。




「そういえば、3組は文化祭何やんの?」




ふと、カツくんが思い出したように言う。


私はそれを聞いて、うふっと自慢げに笑った。





「男女逆転カフェです!」


「…ほー!女子が男装で男子が女装ってこと?」


「そうそう!すごく楽しみなの!」


「……てことは緒方も男装すんのか」





呟くように言ったカツくんは、桃ちゃんの男装姿を想像してか、面白そうに吹き出した。


こういうカツくん見てると、ほんとに桃ちゃんと仲良いんだなって思う。





「あ、3組って敬吾いんじゃん!あいつの女装絶対似合わねぇー!」


「まあまあカツ、お前が1番女装似合わないから」





ゲラゲラと腹を抱えて笑うカツくんを宥めるように、落ち着いたトーンで藍くんが呟く。


そんなやり取りを見てると、面白くて私まで笑ってしまった。


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