爽やかくんの為せるワザ
「え、でもこれ君のだよね?悪いよ……」
「いいからいいからっ、ほら早く冷やさないと!」
私が急かすと、彼は渋々牛乳パックを受け取って頬に当ててくれた。
「ありがとう……」
「うん!じゃあ、保健室行って保冷剤貰って来てね」
「あ、待って」
羽水くんを残して立ち去ろうとしたところで、呼び止められる。
私が振り返ると、彼はこちらを見つめたまま口を開いた。
「親切にありがとう。君……成瀬さんだよね?」
「えっ」
少しだけ熱くなる顔。
し、知ってたんだ、名前。
なんかちょっと恥ずかしい。
「な、成瀬です」
「ありがとう成瀬さん」
彼は優しく、どこか切なさを含んだ笑顔を浮かべる。
……振られて辛いはずなのに、笑ってくれるなんて優しい人だな。
そう感じながら、私はその場を立ち去った。