爽やかくんの為せるワザ



「……いやいいよ、ありがとう。僕はずっと裏方に回るよ」


「え、どうして?佐賀くん綺麗だし、人気も出そうなのに……」


「め、目立つのはあんまり……」




かああっと赤くなる白い頬を見て、私は少しだけ口元が緩んだ。



なんか、可愛いな。

佐賀くんの話を聞いてから、少しだけ佐賀くんと距離が縮まった気がするのは私だけかな。





「それに女装なんて恥ずかしいよ……」


「まあ、普通そうだよね…。でも敬吾くんだってあんなに楽しそうに接客してるよ?
佐賀くんの女装もとっても素敵だし、皆褒めてくれると思うけど」


「……ありがとう成瀬さん。でも、ミスターコンもあるし……落ち着きたいんだ」





……そっか、ミスターコンやっぱり緊張するよね。


ミスターコンは午後の部が終わる頃に始まるから、まだまだ先ではあるけど。


佐賀くんが落ち着きたいならそっとして置いたほうが良さそうだ……。





「あ、いたいた佐賀くん」




そんな時。

ホールからひょっこり顔を覗かせたのは桃ちゃんだった。




「カツが呼んでるよ。そろそろホールの子と交代してくれる?」




桃ちゃんがそう言うと、今度はホールから三田さんが戻って来た。

三田さんは「佐賀くんホール交代して〜」と笑顔で佐賀くんに頼んでいる。



ちらりと佐賀くんを振り返ると、佐賀くんの白い顔は真っ青になってしまっていた。



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