爽やかくんの為せるワザ



なんで?

足に力が入らない。



……ま、まさか。


私、腰抜かしちゃった……?



う……嘘でしょ……?


1組お化け屋敷……恐るべし。



……なんて言ってる場合じゃないか。

どうしよう、身動きが取れない……。


沙羅ちゃん達に電話して戻って来てもらった方がいいかな……?






「珠姫ちゃん!」





と、その時。

暗闇の中、誰かが私の名前を呼んだ。



びっくりして声のした方に振り返ると、携帯のライトで足元を照らしながらこちらに駆け寄って来る人物が見える。


その人物が近くまで来たところで、ようやくその人物が藍くんだったと認識できた。



……あ、藍くん……!?




「大丈夫!?どうしたの?立てないの?」


「……えっ、と……あの、ごめんなさい……腰が抜けちゃったみたいで……」


「ええっ!?ごめんね珠姫ちゃん!
ほら、掴まって!」




藍くんはそう言って、慌てる様子で私のすぐそばに背を向けてしゃがみ込んだ。


……もしかして、これはおんぶしてくれる体勢?



私は少しだけ恥ずかしくなったけど、せっかく藍くんが助けてくれようとしてくれてるから素直にその肩に腕を回した。


安定したことを確認して、藍くんはひょいと私を背負ったまま立ち上がる。




「やり過ぎたね……ほんとにごめんね珠姫ちゃん」




背中越しにそう話す藍くん。



な、なんで藍くんが謝るの?

……謝るのは私の方だよ。

こんな風に迷惑掛けちゃって……ほんとに自分が情けない。



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