爽やかくんの為せるワザ
「珠姫ちゃん達、皆怖いの平気だって言ってたから一部が怖がらせる為にすごく張り切っちゃって……。まあ正直俺もそうなんだけど」
「……そうだったんだ。いや、でもそれはすごくありがたいよっ」
ありがたいって言うのはおかしかったかな……?
でも、私達の為にそんな風に頑張ってくれてたのは本当に嬉しいし、ありがたい。
……その成果しっかり出てるし。
めちゃくちゃ怖かったもん。
「……あ、そういえば藍くんはなんで私がここにいるの分かったの?」
「俺客寄せしてて、ちょうど戻って来たら緒方達が外にいて珠姫ちゃんが出て来ないって言っててさ。
もしかして中暗いし転んでるのかと思って慌てて探しに来たんだ」
私を背負ったまま、いつもの優しい笑い声を出す藍くん。
お化け屋敷の通路を抜けていく間、お化け役の数人が「何?」「どしたの?」と口々に声を掛けてくれている。
……どうしてだろうか。
そんな藍くんを背中越しに見つめていると、心臓が苦しくなる。
藍くんは本当に、どこまで優しいんだろう。
優しい藍くんを見てると、なぜか切ない気持ちになってくる。
……でも一緒にいると、ほんとに心から安心出来るんだ。
こういう藍くんの魅力に、皆惹かれていくんだろうな。
……私もそうだもん。