爽やかくんの為せるワザ



そしてお化け屋敷内を進み続けて数分後、私達はなんとかお化け屋敷を抜け出すことが出来た。


普通の教室のはずなのに、やけに長く感じたな……。



出口付近では桃ちゃんと沙羅ちゃんが心配そうな顔で待っててくれていた。




「あ、たまー!」


「おい大丈夫かよ珠姫!」




藍くんにおぶさっている私を見て、彼女達は慌てて駆け寄ってきた。


藍くんはそこで私の様子を見ながらゆっくりと下ろしてくれて。

もうちゃんと足に力が入ることを確認して、私は自分の足で立った。




「ごめんなさい……迷惑掛けちゃって……」


「悪いのはあたしらだよ!珠姫置いて来ちゃったんだから」


「暗くてたまのこと見失っちゃって、先に走って進んじゃったのかと思ってさ……」


「でも私もつまずいちゃって、おまけに腰も抜かしちゃった……。藍くんにまで迷惑掛けて、ほんとにごめんなさい」


「気にしてないよ。俺は珠姫ちゃんに怪我がなくて安心した」




爽やかな笑顔を向けて、優しく頭を撫でてくれた藍くん。


私はその言葉と仕草に、体中がじんわり温かくなった気がした。


その笑顔を見ると、私も安心出来る。



……皆ほんとに優しいなぁ。







「藍くんまじでありがとう。よくたまが転んでるって分かったね」


「中結構暗いから、もしかしてって思ってさ」


「いや〜さすが羽水だな。咄嗟のナイス判断」




沙羅ちゃんはぽんと藍くんの肩を叩く。


藍くんは「それほどでも」とはにかんでいて。



……明るく振舞ってくれる皆の優しさに、私は心から救われた気がした。




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