待ち合わせは5分以内に
私が幼い頃両親は死んだ。


私の中に、母の記憶はない。
母は、もともと病弱な人だったらしく、私を産むのも命懸けだったらしい。

写真でしか見たことはないが、
優しそうな笑顔の向日葵のような人だと思う。
でも、その体はとても細く華奢で、色白の肌も儚
げに見える。

体の弱い母が私を産むのはとても危険だったよう
で、お医者さんから、産むのは厳しいと止められたそうだ。それでも母は、私を産んでくれた。

しかし、母は早産で母子共に危ない状態になりつつ最終的には帝王切開で私を出産した。

母はそれからしばらく生死の境をさまよい、
私も、未熟児で生まれたため、
しばらくは保育器から出られなかった。

なんとか2人共一命を取り留めたものの、
2人が無事だと分かるまで、
父は生きた心地がしなかったらしい。

それでも私を産んでから、母の体調はあまり芳しくなく、私が2歳を迎える前に亡くなった。

命がけで産んでくれた母には感謝しかない。
たとえ記憶がなくても、母が私を抱く写真の眼差しを見れば私の事を愛してくれていたと分かる。

母のことを思うだけで、私の心は温かくなる。
愛されていたと思える。



それだけで私は幸せ者だ。


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