待ち合わせは5分以内に
父が息を引き取ってから、私は警察の方から、
事故の詳しい状況を聞いた。

信号無視をしたトラックが、濡れた路面でスリップして歩道に突っ込んだらしい。
そしてちょうど信号待ちをしていた人々を巻き込んだ。

たくさんの怪我人が出て、父の他に2人、計3人が亡くなった。


訳の分からない書類にサインして、父の荷物を引き取った。



父が大事に使っていた母からのプレゼントだという鞄とスーパーの買い物袋。

中身を見て、我慢していた涙が溢れた。
中には父が唯一まともに作れるオムライスの材料が入っていた。
母と結婚する前に教えて貰いながら一緒に作ったんだと幸せそうに話していた事をよく覚えている。

オムライスは私と父の大好物だった。

父と母の思い出の味は、私にとってもたった1つの家庭の味だった。


もう二度と食べられないんだと気がついた時、孤独と不安に押しつぶされそうになった。
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