冷たいキスなら許さない
前職は大手電機メーカーの受付をしていた私。
残業がない職場だったし、大学生の時に知り合って付き合っていた彼の櫂は超多忙でなかなか会えない。
時間があった私はパソコンスキルを磨くことに時間を費やした。
櫂の部屋でいつ戻るかわからない彼の帰りを待つ時に本棚に並ぶ建築関係の本を読み漁っていたら、結果的にそちらの知識を手に入れることになって、皮肉なことにそれが今はかなり役に立っている。

大和社長が拾ってくれて、もともと持っていた受付としての対人スキル、追加のパソコンスキルに基本的な建築関係の知識を総動員して私は今の居場所を手に入れることができた。


「商工会のおっさん連中から俺を守ってくれよ。常に側にいて秘書とかいっそのこと彼女のようにふるまって縁談除けになってくれ」

社長のデスクに見合い写真が山積みになった頃、そう言って社長が私に泣き付いてきた。
「結婚すれば問題ないんじゃないですか?」

「相手があっての結婚だろうが。それがなかなかOKがもらえそうもないんだ。こっちは長期戦になりそうだから外野からあーだこーだと余分なことを言われたくない」

「えええ?」
驚いた。
この人のプロポーズを断る女性がいることに仰天。

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