冷たいキスなら許さない
「いつもあんな感じなのか?」

帰りの車で社長がクスクス笑いをしながらハンドルを握る。
帰りも運転するつもりでいたのに家を出るときになぜかキーを取り上げられていた。

「そういえば、4人で食事をするのは初めてでしたね」

6人用のテーブルにイスが4脚。いつもはお父さんとお母さんと私の3人。
エリちゃんや双子のチビ達が来るとどこからともなく子供イスが追加される。
進さんは仕事のため、送迎だけはするけどなかなかここでゆっくりはできないらしい。

「お袋のマシンガントークについていける灯里ってすごいと思ったよ」

「ウソだ。お前らうるさいって思ってたでしょ」

「いや、実際俺も進も灯里には感謝してる。お袋たちが灯里と食事するのが楽しいらしくて。こっちの昔の友達とやらにも可愛い娘がご飯食べに来てくれるって自慢してるらしいから。進のとこには灯里の好物のリサーチをしてるし」

「あーなるほど。それで私の好みのものが多く食卓に登場するわけですね」

「灯里には悪いけど、こっちにいる間は顔出してやってもらえるとありがたい。親父も灯里と碁が打てて喜んでるからさ」

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