冷たいキスなら許さない
「え？厚木？厚木って神奈川県の厚木？親父たちのいる？」
「そう。あの厚木。うちの関東支社のある厚木」
「貸し出すって・・・どのくらい？」
「半年くらい？社長も決めてないみたいよ」

進さんは黙って私の顔を見つめた。
その瞳は大丈夫？と聞いているようだ。

エリちゃんの旦那さんである進さんは私が東京から長野に戻ってきた事情を知っている。メグミちゃんのいる前で私のプライベートな話を突っ込まないでいてくれたことにホッとした。

「灯里さんって前は東京にいたんですよね？じゃあ厚木なんて田舎でしょ？私みたいに長野から出たことないヒトにはかなりの都会ですけどー」
メグミちゃんはふふっと屈託なく笑った。

「そうだね、生活環境に対しての不安はないよ」
そう長野の田舎から慣れない関東の地に行く不安などはない。私はここより東京に近付くのが嫌なんだ。
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