冷たいキスなら許さない
「・・・吉乃さんは、大叔母は君がフォレストハウジングの社員だって知らないよ。大叔母が知っているのは元社長の奥さん、今の森社長の母親だよ」

え?お母さん?
「あなたの大叔母さまが社長のお母さんと知り合い?」

「ああ。俺もどのくらい親しいのかはよく知らない。大叔母から趣味の集まりで知り合った女性の家族が経営する建築会社を候補に入れて欲しいと言われたことは間違いない。その元社長夫人の案内でフォレストハウジングが手掛けた住宅を何軒か見て回ったらしいし」

そういえば、お母さんから新しく知り合った人に自宅を見せて褒めてもらったと聞いた気がする。
料理好きのお母さんのこだわり溢れるキッチン。
LDKではなくてあえてキッチンは独立している。
どんなに高性能のレンジフードを使っても油やにおいはキッチンからリビングに流れていく。それをお母さんは嫌がったらしい。

オフホワイトの珪藻土を使った塗り壁にフローリングは桜の無垢材。
リビングの薪ストーブに、傾斜した高い天井にはシーリングファンライト。
洗面台はお父さんの手作りの陶器のボウルが使われて、至る所にご夫婦のこだわりが詰まっている。

ここはまるで高原のプチホテルか別荘かというくらい魅力的な住まいになっているのが厚木に建てた森家のご両親の家だ。

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