冷たいキスなら許さない
「終わったかって聞いてるんだが?」

「社長、早かったんですね。今片付けますからちょっと待ってて下さい」
私の仕事が終わってないと見るやちょっとイヤな顔をした。今日は暴君モードだ。

今日はイースト設計の打ち合わせじゃなく、この後パーティーに参加することになっているのだ。社長はここに私の迎えに来たというわけ。

「社長、コーヒーいかがですか?」
若くてかわいい女の子が社長にキラキラした目を向ける。

「ああ、すぐに出かけるからいいよ。ありがとう」
微笑む社長と目が合って彼女の頬が赤く染まる。はいはい、お約束の感じね。

このオトコ、私には不機嫌を隠さないくせに、この態度はどうなんだ。

「おい、まだか。片付けの手が止まってるぞ」横目で睨まれる。

「だいたい社長が早く来たんですからね。メイクだって直したいし少しくらい待っててください」

「は?化粧?いいよ、そんなもん」
「いいわけないでしょう」何言ってんだ、この男は。
やりすぎないメイクは大人のマナーでしょ。

「あれ?お前今日スカートなの?着替えろよ」
私の膝のあたりを見て不機嫌そうに命令する。

今度は着替えろだ?
メイク直しはダメでファッションにケチつけるってどういうこと。

「着替えなんて持ってきてるはずないでしょ。何ですか一体。今までどこに行くにも私の洋服なんて何にも言ったことなかったじゃないですか」
ムッとして言い返した。
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