冷たいキスなら許さない
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鎌倉の高台に建つ石造りのレストラン。
ウェイティングバー、パーティーフロア、個室スペース、テラス席などのほかガーデンパーティー施設を兼ね備えたイースト設計がデザインしたレストランのお披露目パーティーに招待されていた。

かなり広いし、レストランというより大型イベントスペース。
招待客もかなり多くて政財界から芸能人まで招かれているようだ。

「すごいですね。さすが東山氏のイースト設計。眩暈がしそうなすごい人脈。圧倒されます」
隣に立つスーツ姿の大和社長を見上げた。

でも、きらびやかなこの中にいてもこの人の存在感も負けていない。
高身長に広い肩幅、しっかりとした胸板にスーツが似合っている。

顔面偏差値も高いんだよね。今夜も女性が群がってくるんだろうか。
私の方はセクハラ対策で超地味なパンツスタイル。秘書どころかもしかしたらリクルーターに見えないかな。
これじゃあ今夜は大和社長の彼女役はできそうもない。

「灯里、離れるなよ」
社長が私の腕を持って自分の腕に絡ませた。

え。

なんか変な絵面じゃないかな。これがドレスならエスコートって感じだけど。
せめてワンピース、いやスカート。これじゃ秘書が図々しく社長にしがみついてるみたい。

私が腕を離そうとすると「いいから離れんな」と怖い目で睨まれた。

暴君め。
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