冷たいキスなら許さない
良かった。何だかわからないけど、櫂から社長の意識がそれたみたい。
「社長、どこにいたんです?待ち合わせしたソファースペースとは反対方向から来たみたいですけど」
私の右手はまだきゅっと社長の背広をつかんだまま。こうしていないと手が震えてしまう。
「トイレでコンタクトレンズを落としたっていう爺さんがいて。コンタクトがないとほとんど見えないって言うから、仕方なく一緒に来てるっていう息子のところまで連れて行ってやってたんだ。
それでここに居なかった。その隙にお前がこんな目に遭うなんてーーごめんな」
私の頭や背中を撫でながら謝る社長にいつもの暴君の影は微塵もない。
この人の本質はこういう優しい人だ。
私は抱き付いたまま黙って頷いた。
「灯里ちゃん!」
次にかけられた声は東山氏の奥さま、イースト設計の副社長のもので、社長の背広を握ったまま振り返ると、奥さまとさっきの櫂の部下らしき男性がこちらに来るところだった。
「社長、どこにいたんです?待ち合わせしたソファースペースとは反対方向から来たみたいですけど」
私の右手はまだきゅっと社長の背広をつかんだまま。こうしていないと手が震えてしまう。
「トイレでコンタクトレンズを落としたっていう爺さんがいて。コンタクトがないとほとんど見えないって言うから、仕方なく一緒に来てるっていう息子のところまで連れて行ってやってたんだ。
それでここに居なかった。その隙にお前がこんな目に遭うなんてーーごめんな」
私の頭や背中を撫でながら謝る社長にいつもの暴君の影は微塵もない。
この人の本質はこういう優しい人だ。
私は抱き付いたまま黙って頷いた。
「灯里ちゃん!」
次にかけられた声は東山氏の奥さま、イースト設計の副社長のもので、社長の背広を握ったまま振り返ると、奥さまとさっきの櫂の部下らしき男性がこちらに来るところだった。