冷たいキスなら許さない
「眠そうですね。昨日も残業したんでしょう?」
どうやら欠伸をかみ殺しているところを見られていたらしい。
私の横に関東支社の責任者である下北さんが立っていた。
彼は社長と共に会社を急成長に導いたメンバーのひとりで社長の古くからの友人。
「ははっ。すみません。仕事が遅くってなかなか処理しきれてなくて」
昨夜深夜まで残ってたことがバレているのか?ここは笑ってごまかす作戦。
「いや、灯里さんの伝票の処理スピードが遅いなんてあり得ない。ここまで事務処理作業をため込んでいた俺たちの尻拭いをさせてホントに申し訳ない。
おまけに展示場のスタッフ教育までやってもらってさ。俺たちは助かってるけど、灯里さんは大変だよな。大和の呼び出しも多いし」
「ホントですよ。こっちの仕事に集中したいのに。
下北さん、社長のお友達なんですよね?呼び出し回数減らすように言ってもらえませんか?あっちで私のやることなんてホントたいした用事じゃないんだから」
鼻の上にキュッと力を入れて嫌な顔を作ってみせた。
「うーん、言ってもいいけど大和がなあ・・・」ちょっと言葉を濁してくる。