冷たいキスなら許さない
・・・あー、言ってませんね。確かに言ってませんね。”連れて帰る”って送ってくれるんじゃなくて本当に連れて帰るって意味だったんですね。

強引なのは今に始まったことじゃない。自分の部屋で1人になりたかったけれど諦めるしかない。
お腹もすいたしね。

タクシーが森家の前に止まるとすぐに玄関が開いて社長のお父さんが出迎えてくれた。

「灯里ちゃんおかえり。パーティーだったのにお腹空いたって?今母さんが嬉しそうに夜食の支度してるからたくさん食べるといいよ」

玄関にまでいい匂いが漂ってきている。

「わあ。煮魚かな。でも、遅い時間にすみません。お邪魔します」

「気にすることないさ。今夜は泊ってくってな。母さん大喜びだから」
お父さんは笑顔で応じてくれる。

ん?泊まる?
後ろにいる社長を振り返った。

タクシーの中と同じあの不敵な笑み。
何か企んでるとは思ったけど、夕飯の誘いだけじゃなかったのか。この策士め。

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