冷たいキスなら許さない
「社長がなんですか?」

「うん。まあいいや。言っておくよ。呼び出し回数減らせって」
下北さんは少しだけ困ったような顔をして笑った。

「お願いします。割と本気で」

「その代わり、灯里さんもあまり残業しないでもらえる?大和も心配するし」

「え、あ、はい。わかりました」

「じゃあ、言っておくね」

私に向かって軽く手を上げると下北さんは自分のデスクに向かっていってしまった。

社長が心配する?いや、ないない。
私が残業したくらいで社長は心配しませんよ、そう言おうと思ったけど余分な発言かもしれないと思ってやめておいた。

社長は残業くらいで心配するタマじゃない。
だって、あっちでの繫忙期は深夜まで二人で残っていることも多かったのだから。
私の残業なんて当たり前と思っている人だ。
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