冷たいキスなら許さない
信じられない
何これ。

今起こったことが理解できない。

”事故”じゃなくてキスだよね。顎、くいってしたよね。
お皿とグラスを持ったままへなへなとフローリングにへたり込んだ。

嘘でしょ。

何でキス。何が”事故だ”よ。

廊下を隔てた向こうからかすかにシャワーの水音が聞こえてくると徐々に腹が立ってきた。
フローリングの床の冷たさが私を現実に引き戻す。

何なの!

勢いよく立ち上がり、手に持っていた食器をキッチンのシンクに置いて私の布団が敷いてある和室に飛び込んだ。

キッチンの片付けは明日早起きしてやればいい。
もう今夜は社長となんて顔を合わせるもんか。

電灯も点けず、枕を抱え込んで布団に座り込んでむかむかと腹を立てていた。
何なの、何なの、何なのよ。
あの態度は何なの。
信じらんない、こんなのあり?
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