冷たいキスなら許さない
ダメダメダメ。
何考えてんの、わたし。しっかりしろ。

愛がないキスなんて当り前じゃないの。社長と私の間に本当の愛なんてないんだから。

・・・もしかして秘密の彼女と上手くいってないんだろうかーーー
頭をふるふるっと振って変な思考を振り払いスマホに手を伸ばした。

昨夜櫂からの電話を無視した後からもメールが入っている。

『話がしたい。今夜そっちに行く』

話なんかもうないってば。
謝罪なんていらないから、西倉恭香をしっかり縛っておけと思う。

握りしめたスマホが着信を知らせる。
「あ、社長。下北さんからです」社長にひと言告げて電話に出た。

「おはようございます。今会社に向かっているところですけど、何か急ぎがありましたか?」
「おはよう、ええっと、灯里さん今って大和の車だよね?」

「はい。昨日森のお宅に泊めていただいたので・・・ってよくご存じですね?」
「ああ、まあね。それよりさ、会社に顔を出さないでそのまま午前の予定の司法書士先生のとこに行ってくれないか?大和に送ってもらってさ。こっちに戻る時はタクシー使っていいから」

「え?アポ時間早まったんですか?」
約束は10時のはず。私は腕時計を確認する。
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