冷たいキスなら許さない
「うん、ちょっと早くに行って欲しいんだ。頼んだよ」
早々に電話は切られてしまった。急ぎの用事だろうか。

「聞こえました?社長」
「ああ、聞こえた。司法書士事務所だな?里中町だったよな」
「はい、その先の信号を左折でお願いします」

私のスマホをもう一度確認みるけど、司法書士事務所からの連絡は入っていない。
会社に直接連絡が入ったのかな。

これまでも度々時間変更されることがあったから特段疑問も持たずにいた。今日は書類を確認して受け取るだけだからこちらから持参しなければいけないものもない。このまま向かえばいいだけ。

とくに話すこともなく10分ほどで司法書士事務所に到着して車を降り「ありがとうございました。いってきます」と言うと「ああ、頼んだぞ」と社長も軽く手を挙げ私をちらっと見ただけで行ってしまった。

そっけないっていうかなんというか。
ま、社長と秘書なんてこんなものか。
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