冷たいキスなら許さない
お昼には下北さんのおごりだというお寿司の出前がスタッフ全員にふるまわれて、私以外は皆上機嫌で仕事に励んでいた。
私は下北さんからも社長からも何の連絡も入らず、パソコンもタブレットの使用も禁止されて、落ち着かない。みんなの雑談に応じる心の余裕もなく。
ひたすら接客に励み、お客様がいない時間は黙々とハロウィンの飾りつけの準備をしたり販促品のラッピングをしたり。
ーーー午後3時。
やっと下北さんが現れた。
「小城」下北さんがそう言っただけで小城さんが皆を連れて事務室を出て行った。
何このツーカーな感じ。
黙って下北さんを見つめると、困ったように笑みを浮かべた。
「そんな怖い顔してみないでよ」
「だって下北さん何も説明してくれないから。支社にどなたが来ていたんですか?どんな話で、社長は?社長はどこにいるんですか?長野に戻りました?」
「ちょっと落ち着いて。そんなに一気に聞かれると、どれから話せばいいのかな」
落ち着けと言われても、早く知りたくて仕方ない。