冷たいキスなら許さない
振り向くと、真剣なまなざしで私を見つめている。

「しゃちょ・・・大和さんと私・・・」
どうなってるって・・・社長と秘書でーー本命を射止めるまでの外敵除けの彼女役でーー仲良しでーー一緒にいる時間が一番長くて・・・
昨日軽くキスされたけど、”事故”だったらしいからノーカンだ。

「・・・私は大和社長がホントの好きなヒトと結ばれるまでの隠れみのですから」

考え込んでからやっと声を出した私を見て下北さんは「あぁ~」っと声を出してため息をつき頭をガシガシと掻いている。

「灯里さんさ、一生そうやって偽彼女やってくつもり?」

「一生ではないですよ。いくら何でも社長だって一生独身じゃないでしょ?社長の結婚が決まれば私はお役御免になるし」

それがいつかはわからない。でも、彼女にどんな事情があるのかは知らないけれどいい加減に社長を待たせるのはやめて欲しい。
あんなにいい人がこんなに待たされているのを近くで見ているのも結構辛い。
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