冷たいキスなら許さない
3週間振りに会った灯里とゆっくり過ごすつもりで帰宅したのに、灯里に恭香に嫌がらせで置いていかれたあいつのピアスを見つけられて。
気持ちに余裕がなかった俺は灯里を怒鳴り付けてしまった。
仕事がうまくいかず、恭香との縁談も断って上司ともうまくいかず、恭香につきまとわれても同僚の結婚式が終わるまでは接触しないわけにもいかない。その上、灯里に責められて。
ーーーもういろんなことがどうでもよくなってしまった」

カランっとグラスの氷が溶けて音を鳴らした。

離れた席の女子高生の声も店員呼び出しベルの音も何もかも遠くに聞こえる。
まるで鼓膜の手前に1枚膜が張ってしまったようだ。

櫂は苦しげな表情でテーブルの上の拳を握りしめた。。

「灯里に酷いことをした自覚はあった。でも、謝る時期を間違えたんだ。あの時すぐに灯里を追いかけて謝っていたら・・・」

櫂の握った拳が少し震えている。

「本当に後悔してる。ずっと後悔していた。灯里を傷つけたこと、手放したこと。あんな別れ方するつもりはなかった。時期をみて、頭を冷やして謝ろうと思っていた。なのにーー」

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