冷たいキスなら許さない
家具家電付きアパート。
社長はそんな風に言っていたけれど、家具も家電も森家のご両親が準備してくれたもの。
冷蔵庫、洗濯機、テレビ、オーブンレンジなど大型家電やベッド、テーブルにソファの家具。食器などの小物まで準備万端。

家具や家電なんて私が長野に戻ってからどうするんだろうって思って聞いたら「俺の出張の宿泊先にするか社宅にでもするから気にするな」なんて笑っていた。

お金持ちの考えることは庶民の私にはわからない。
こんな時は社長と私の格差を感じる。

おかげでここへの私の引っ越し荷物はほとんどが衣類だけという状態だった。
社長の大きなRV車に積み込めるようなものだったから本当に身軽な引っ越しだった。

そもそも私には自分の車があるのだし、引っ越しも社長が一緒に来る必要はなかったんだけど、なぜか社長は私の実家に現れて引っ越し段ボール箱を自分の車に詰め込んで厚木に向けてさっさと行ってしまって慌てて私も自分の車で後を追うように出発する始末。

私が着いた時には先に着いた社長が荷物も運びこんだ後だった。
そして私が慌ただしく新居に雑貨や衣類を片付けてしまうのを待っていた暴君が「買い物に行くぞ」と言い出した。

「買い物って何を?」
驚くことに冷蔵庫は既に通電されていて森家のお母さんが食料を詰めていてくれてある。
特別に買い足す必要などない気がするんだけど。

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