冷たいキスなら許さない
「いいから行くぞ」
強引に車に乗せられてやってきたのは大きなショッピングセンター。

真っ直ぐ家電ショップのドライヤーコーナーに向かい「どれがいい？」と聞かれた。
驚いた。ドライヤーがなかったことに気が付いていたんだ。

うーん、性能の違いがよくわからない上に値段の差が大きい。
旅行携帯用の小型のものは問題外としても、3000円から50000円まで？？
悩んでいると、
「めんどくせえからこれにしろ」
と社長が手に取ったのは最高金額のもの。

「待って。それはいりません。そんなにたくさんアタッチメントが付いているのなんて何に使うかわからないし使いこなせません」
だいたいずぼらな私がヘッド部分を付け替えて何かをするとは思えない。

「じゃあ、これか」
次に社長が手に取ったものは風量を保ちつつ夜間の使用音も気にならないという配慮がされ、その他の髪を守る機能もついているらしい。値段はあまり可愛くはないけれど。

「それにします」と同意すると社長がさっさとレジに持って支払ってしまう。
「自分のお金で買いますよ。私が使うんだし」と言っても軽く無視される。
しつこく言うと怒りだすのがわかってるから仕方なく甘えておいた。

暴君が買ってくれたドライヤーはとても使いやすくて今やすっかり私の生活に馴染んでいる。
長野の実家で使っているドライヤーもこれに買い替えようかと思っているほど。

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