冷たいキスなら許さない
余りの衝撃に目の前が暗くなりそうになる。
唇をかみしめてぐっとこらえた。

「こんな時にカナダなの?」
お母さんはムッとしている。

「あっちでずっと探してたものが見つかったっていう連絡が入ったんですよ」
「それにしたって何も社長自ら行かなくてもいいじゃないの」

「お母さん、社長が自分で確認しないと気が済まない性格なのはご存知でしょう?ーー私も今は1人になりたかったので、ちょうどいいんです。大丈夫です」
お母さんに握られた手を両手で握りしめて微笑んで見せる。

ぎこちない微笑みになってしまったのは別の理由からだけど、それもお母さんは好意的に受け取ってくれたみたいで。

「まあ、灯里ちゃんったら。なんてけなげなことを言って。やっぱり灯里ちゃんは大和にはもったいないかも」

そんな事を言われると、本気で私のことを心配してくれている森家のご両親への罪悪感で頭がガンガンしてくる。

お母さん、私ちっともけなげじゃないし、もったいない存在でもありません。
大和さんには本命さんがいて。
ホントは私がそんな言葉をもらう資格なんてないんです。

どんどん気持ちが沈んでいく。
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