冷たいキスなら許さない

大和さんのお相手は別にいますからと今ここで言ってしまいたい衝動に駆られる。
でも、大和さんの人生に関わることを私が勝手に話すわけにもいかない。

昨日の朝、一緒に寝ているところを見られているし、何と言ってもこの思い込みが激しいお二人のことだ。息子に別の相手がいたと知ったらどんな行動に出るかわからない。
やはり真実は本人が話すべきだ。

「そんなわけなんで、おばさんも今日のところはー」と下北さんが穏やかに声をかけると、
「そうね」とお母さんも頷いてくれる。

お母さんに一人で大丈夫なの?と何度も聞かれ、「今は一人の方がいいんです」と言うと
「いつでもうちに来てね」と心配しながらも帰って行った。

本当に胸が痛い。

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