冷たいキスなら許さない
やりきれない気持ちを抱えてお母さんの見送りから戻ると、会議室にはまだ下北さんがいた。

「あれ、どうしました?こっちに何か必要な資料がありました?」

ブラインドを背に窓にもたれかかって立っている姿は何か資料を探していたわけじゃなさそうだけど、私はこちらに大量の書類を持ち込んでいたから、念のため。

「灯里さん、大和がカナダに行くこと、知らなかったんだね」

下北さんの真顔にズキンと胸が痛む。
「ハイ。社長とは昨日の朝、司法書士事務所の前で別れた後からは夜に1回メールがあったきりでそれから連絡がありませんから・・・」

「連絡がないの?」

「私は何度も電話したりメッセージを送っているんですけど。社長からは折り返しもないし、返信もありません」

私の淡々とした言葉にえ?っとすごく驚いた顔をされた。

でも、それが真実なんだから仕方ない。

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