冷たいキスなら許さない
「でも、泣き止まないしーー」
祖父は眉毛を下げている。嫁にこんなに強く意見されたのは初めてだろう。

「お義父さん、お宅の息子は父親です。泣いている息子の面倒1つ見られないのなら痛みで苦しんでいる娘の世話などできるはずがないんです。戻ったら、雅也に夕食を与えてお風呂に入れて寝かしつけるように言ってください」

そう言うと、さあ、さっさと帰れとばかりに祖父を追い出してしまった。

「お母さん・・・」いいの?と目で問うと

「ホントにオトコって使えないわね」
とふんっと鼻から息を吐いて、もう一度私の手をギュッと握った。

「一番必要なときに側にいなくてどうするのよ、ねえ」

母の目は少し潤んでいたように見えて私もポロンっと涙をこぼした。
母が私のそばにいてくれる
そう思ったら頑張れる気がした。

< 281 / 347 >

この作品をシェア

pagetop