冷たいキスなら許さない

喉の渇きで目覚めると、寝ながら泣いていたことに気が付いた。

子どもの頃の夢で泣くとは・・・。
ティッシュで拭ってミネラルウォーターを飲みにキッチンへと向かった。

日付が変わっていた。
帰宅してすぐに眠りについたから6時間ほど熟睡したことになる。

朝には程遠く、でもすぐにはまた眠れそうもない。
ソファに腰を下ろし、間接照明だけのぼんやりした灯りに包まれしばらくボーっとしていた。

一昨日は櫂の夢で泣いて、今度は盲腸の時の夢で泣くなんて。
寝ながら泣くなんてなかなかあることじゃないよねと自分に呆れた。

夢の中で握ってもらった手と撫でてもらった頭の感触が残っている気がする。
もう17.8年前の話だからこんなに鮮明に感触を覚えているはずはないんだけどーー


開け放った寝室ドアの向こうからスマホのメッセージの着信音がした。
時計を見ると、社長の飛行機が着いた時間ではないかなと思う。

慌ててスマホを取りに寝室に戻った。

やっぱり。
無地に着いたというメッセージだった。
ホッとして思わず口角が上がってしまう。

『機内でしっかり眠れました?』
そう返信すると、すぐに電話が鳴った。
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