冷たいキスなら許さない
先に立って会議室のドアを大きく開けた。

「では桐山さん、今後ともよろしくお願いいたします」
大袈裟に声を張って頭を下げる。
その声に気が付いた雀の子がキラキラした期待に満ちた目をしてこちらを見ている。

櫂にチラリとごめんねとという視線を送って「お客様のお帰りだからお見送りして」と雀の子に向かい指示を出した。

「はいっ!」
私が会議室に入った後でじゃんけんに勝ったのであろう雀の子が嬉しそうに立ち上がった。

ホントにごめんね、櫂。
私も社内で妬まれる存在になりたくないのだよ。

ウキウキとした雀の子に付き添われ出て行く櫂の背中に頭を下げてその場で見送った。

自分のデスクに戻る時に下北さんと目が合い、軽く頭を下げると、右手を軽く挙げてニヤっとした下北さん。
とんでもない誤解はしていないだろうけど、かなり面白がってるな、あれは。




< 291 / 347 >

この作品をシェア

pagetop